2020年12月25日金曜日

令和二年 秋興帖 第八(田中葉月・中村猛虎・小沢麻結・渡邉美保・なつはづき)



田中葉月
月光や放せとせがむ千羽鶴
レモン置く吾がたましひに向かひ合ふ
カンナ燃ゆいく時代かがありまして
木犀に呼び止められてしまひけり
ぬばたまの玉兎を探す夫の貌


中村猛虎
幽霊の寿命の尽きて秋の草
蓑虫の全集中の呼吸かな
血痕を辿れば白き曼珠沙華
芙蓉咲く蘇我入鹿の首塚に
式神を飛ばせば揺れる秋桜
稲光乳房はもっと下にある


小沢麻結
猿酒や花のかんばせはや染まり
雅男の丹精のこれ秋茄子
墓原の足下を洗ひ秋の潮


渡邉美保
行先は知らないと言ふ葛の花
半透明の付箋になりし秋の蝶
火恋し郵便バイク素通りし


なつはづき
秋桜や聞こえるようにひとり言
きりたんぽの穴から覗く永田町
鵙日和すっぴんで書くラブレター
秋葉原尺取虫の席がない
団栗をひとつずつ捨て夜に入る
火の恋し生ハム透けるほど薄く
冬隣手紙破って捨てる山羊