田中葉月月光や放せとせがむ千羽鶴
レモン置く吾がたましひに向かひ合ふ
カンナ燃ゆいく時代かがありまして
木犀に呼び止められてしまひけり
ぬばたまの玉兎を探す夫の貌
中村猛虎幽霊の寿命の尽きて秋の草
蓑虫の全集中の呼吸かな
血痕を辿れば白き曼珠沙華
芙蓉咲く蘇我入鹿の首塚に
式神を飛ばせば揺れる秋桜
稲光乳房はもっと下にある
小沢麻結猿酒や花のかんばせはや染まり
雅男の丹精のこれ秋茄子
墓原の足下を洗ひ秋の潮
渡邉美保行先は知らないと言ふ葛の花
半透明の付箋になりし秋の蝶
火恋し郵便バイク素通りし
なつはづき秋桜や聞こえるようにひとり言
きりたんぽの穴から覗く永田町
鵙日和すっぴんで書くラブレター
秋葉原尺取虫の席がない
団栗をひとつずつ捨て夜に入る
火の恋し生ハム透けるほど薄く
冬隣手紙破って捨てる山羊