小野裕三(海原・豆の木)手土産のように広がる鰯雲
号外に包まれ朝の桃匂う
眠る日も泣く日も秋の遊覧船
龍淵に潜むあたりに学術書
老いてなお象に一芸黄落期
妹尾健太郎初風のはじまるところ無地番地
葡萄とは思わなかったのが不思議
まるがおはあんまりいない菊人形
栗飯の栗慰めているお米
秋寂ぶや抜くに難儀な茄子の棘
水岩 瞳三条を上リ西入ル秋の蝶
あーだこーだと人はコロナ禍水澄めり
虫籠や共同リビング食事付き
うつかりと集めてしまふ木の実かな
どうせならあの人に付く牛膝
渕上信子九月二七日 俳句詠む力士正代初優勝
九月二八日 秋晴や赤い小さな傘干して
九月二九日 庭へ出ん秋蚊一匹ぐらゐなら
九月三十日 掃除当番秋草を少し刈り
十月 一日 今日の月マスク外して深呼吸
十月 二日 雲動き子夜の満月煌々と
十月 三日 長き夜のもういちど近現代史
佐藤りえインターチェンジ芒のなかへきりもみに
楽しかつた日西日に駅のドアひかる
筑紫磐井紅葉赤くなるとき 水青くなるとき
いぢわるな書評をながめ九月盡