2021年1月22日金曜日

令和二年 冬興帖 第一/令和三年 歳旦帖 第一(ふけとしこ・網野月を・関悦史・花尻万博・曾根 毅・仙田洋子・椿屋実梛)


【冬興帖】

ふけとしこ
山茶花や人形の髪荒びゆき
アメジストセージに冬の日の陰る
枯れてゆく中に紛れてゐたる紐
祝はれて雪見障子に鳥を見て
沼杉の気根突立つ氷かな
寒波くる父の蔵書に父の印


網野月を
義眼なればもみぢの遅速映しけり
裸木の梢労る時雨かな
時雨には五色の虹が桧木山
大福の豆穿り出す義央忌
恋は千里眼冬空どこまでも高く
数え日やto do list続く続く
お陰様にて元気な老父日記買ふ


関悦史
目をつむる首の三島の日なりけり
東洋文庫の緑色を積み聖樹とす
ジムノペディ千年聴ける氷かな


花尻万博
記憶なき水あり水鳥の傍らに
人間の大根かぶら水染めて
消炭や朝の走れる枯木灘
凪優し星を啄む千鳥ども
鈴曳きていつか綿虫連れて行く
風花を舞はする炎景色焼き


【歳旦帖】

曾根 毅
楪や面長にして太き耳朶
電子国土までのおはようお年玉
後々の為に指す歩や松の内


仙田洋子
初鏡恋しき人のなくもなし
鏡餅テレビの前にちよとありぬ
獅子舞の大きく空を喰らふ口
猿曳の猿が笑へと手をたたく
先ほどと同じ芸させ猿廻
猿曳も猿もさつさと帰りけり
沖浪のきらきらとして漁始


椿屋実梛
 コロナ禍
新宿が静かすぎたる元旦
初夢をすぐに忘れてしまひけり
乗り継ぎがうまくいきたる初電車