2021年3月5日金曜日

令和三年 歳旦帖 第七(なつはづき・仲寒蟬・前北かおる)



なつはづき
陽だまりが甘みを増していく春着
乗初やしきりに影の揺れる恋
延命を議論している福寿草
人日や酸っぱき眼帯を外す
寒紅を綱渡りして取りに行く
雪女日記に溜める静電気
寒波来る歯科も耳鼻科も混んでいる


仲寒蟬
鏡餅家の重心かたむきぬ
初夢はTレックスに追はれけり
一年の疲れまだあり初鏡
勝独楽を高く掲げて兄帰る
独楽跳ぶや入鹿の首のごとくにも
人日や悪友持たぬことさびし
村内放送一時よりどんど焼


前北かおる(夏潮)
カーテンの内に初日の熱たまり
ふねひとつ我がものにして初湯殿
都より広まる疫病若菜摘む