2021年4月23日金曜日

令和三年 春興帖 第一(のどか・大井恒行・夏木久)



のどか
寄居虫の手本地球の歩き方
太陽であったおみなよ花ミモザ
“ローランの美女“の吐息や霾晦
さくら餅付喪神なる皿へもり


大井恒行
陰卓というさびしき丘や春隣
軍旗また興亜を祈り花の森
幼年や焦土にありしかの牡丹


夏木久
淘汰して空誂えり紋白蝶
瘡蓋のように瓦礫をあっ菫
銭湯の富士へ太郎は旅立ちぬ
ヴィーナスを視線で縛り付け春宵
執拗に執事が春夜を叩き執着
サヨナラの切手を雨で霞草
墨蹟へ棹差すように花筏