仲寒蟬「ほ」と口を開くるかたちに梅の花
補助輪はづれ春風となりにけり
戦さなどやめて草餅でも食はう
たんぽぽの途切れしところ船着場
雲すこし混ぜて編まれし春帽子
ふらここや天より取つて来し楽譜
蠅生まる幻想交響曲の鐘
曾根毅ガーベラをときどき眺め受験生
花粉症首から黄ばみはじめたる
花粉症受話器に耳を当てながら
坂間恒子海桐の実手に切り傷のある景色
ほうぼうの尾鰭の戦ぎかの子の忌
大仏の背中がひらく惜春
岸本尚毅春立ちし海や日暮に間のありて
子供泣く三人官女冷然と
なつかしき粉よ欠片よ雛あられ
春や昔の春ならぬ我が吹出物
埋もれてゐる団栗や地虫出づ
砂白く流れし跡や春の雨
磯巾着保育士は髪かきあげて