青木百舌鳥下萌に舗道はゆるき下り坂
山茱萸のゆたかに花を爆ぜにけり
芽木の名をあれは欅と眩しみて
草萌をけふは仰ぎて土堤散歩
山本敏倖春の野に鼻毛のような飛行船
遠くまで初蝶のままこのままで
網膜に春の月呼びノクターン
さえずりや平行四辺形のまま
異端派の能の系譜や竹の秋
堀本吟洛北の運河日影る桜花
蛇が出る穴いえ揚げたてのドーナツ
ウイルスは感心虚心坦懐な
中村猛虎歩数計壊れて君を卒業す
ハンカチの自販機のあり鷹鳩に
受験子の母の大きな独り言
雑巾掛け尻の高さに蝶の道
土手に腰掛け土筆に愚痴る
四本の脚の其々青き踏む
父の記憶妻の記憶の海苔黒し