2021年7月16日金曜日

令和三年 花鳥篇 第三(坂間恒子・中村猛虎・木村オサム)



坂間恒子
からすうりの花サックス咆哮す
黒揚羽ダリの時計にふれるかな
フラメンコダンサー手拍子立葵
阿修羅像の片鱗しめす宵待草
倒木に五匹の子亀暗くいる
    

中村猛虎
 監視
揚雲雀追いかけていく縄梯子
深呼吸して細胞に木の芽吹く
高速道にもんどり打ちて山桜
囀りに踝まで埋まる
パソコンの全てにカメラ花の冷え
菜の花の非常ボタンに届かざる
チューリップ君のどこにも翳がない


木村オサム
梅日和片手だけ出す箱男
本を読む人の手を見る花の昼
囀りや疲れた影が先に浮く
陽に透かすリポビタンD麦の秋
若作りしてさくらんぼもらひけり