2021年7月2日金曜日

令和三年 花鳥篇 第一(仙田洋子・曾根 毅・杉山久子・夏木久)



仙田洋子
揚雲雀わたしを空へ招いてよ
少女らの駆けて菜の花蝶と化す
白躑躅ティッシュペーパーのごと溢れ
百千鳥同じ地球を借りてゐる
太古よりつづく大空軒菖蒲
遠くより恋の兆しの日雷
夏河原朝日のやうな夕日かな


曾根 毅
石室の大きな隙間山桜
飛花落花胡麻の風味のランドセル
迎撃や桜と桜の間から


杉山久子
すかんぽのさみしきほどに丈高く
剥きかけのバナナを持つて眠るなよ
ブラウスに葉桜の影ららららら


夏木久
逃水と太陽の影闇市に
難色を避けて余白に逗留す
病院の影に寂れて椅子を待つ
とある星の空蝉ホールのリサイタル
その一語絡め取るには棘棘が
幽霊の中の数人ホームレス
徐は街壁画伯の深層考