2021年7月9日金曜日

令和三年 花鳥篇 第二(岸本尚毅・渕上信子・山本敏倖)



岸本尚毅
額から鼻へしづくや甘茶仏
バンザイをさせて小さき子猫かな
埼玉は草餅うまし雲白し
その人の墓ある山に鳴く蛙
陽炎の尖の震へてゐるところ
薄赤き塵となりつつ桜蘂
てつせんの花喰ふ虫や葉も少し


渕上信子
マーキングみたいに散歩春寒し
人丸忌いかなお方でおはせしや
昭和史の複雑すぎる昭和の日
春はやて風見の鳥を軋ませて
猫の手でこと足る用事小判草
感染予防手順が違ふ老い鴬
夕涼やみんなマスクをして真面目


山本敏倖
枝垂れ桜己の影を嗅がんとす
手のひらに残花の残響匂いけり
見えない糸の遺伝子辿り鳥帰る
酔狂の素性外せば水中花
蟻の穴人差し指が襲いくる