2021年7月30日金曜日

令和三年 花鳥篇 第五(渡邉美保・望月士郎・辻村麻乃)



渡邉美保
海光や翼稚き巣立鳥
幼鳥のはばたく構へ大南風
鳥ごゑは鳥声を呼び新樹光


望月士郎
春陰はガーゼの匂い少しめくれ
逃水にときおり跳ねてわが魚
捕虫網かぶせるための弟欲し
老いという静かな点線蟻つまむ
幻聴のようにオオミズアオを見る


辻村麻乃
入学式むんと胸張る双子かな
翩翻と旗ひるがへり青嵐
裏口に「星のタンゴ」てふクレマチス
海霧や夕闇迫る時計台
箱庭や幽閉さるる偏屈王
袋小路狂つたやうに鳴る風鈴
緋のダリア夜行列車に顔を挙ぐ