俳句新空間俳句帖
スクロールしてみる俳句巻子本。 年二回、媒体誌『俳句新空間』に転載。 SINCE 2012(平成24).12.28.
2021年7月30日金曜日
令和三年 花鳥篇 第五(渡邉美保・望月士郎・辻村麻乃)
渡邉美保
海光や翼稚き巣立鳥
幼鳥のはばたく構へ大南風
鳥ごゑは鳥声を呼び新樹光
望月士郎
春陰はガーゼの匂い少しめくれ
逃水にときおり跳ねてわが魚
捕虫網かぶせるための弟欲し
老いという静かな点線蟻つまむ
幻聴のようにオオミズアオを見る
辻村麻乃
入学式むんと胸張る双子かな
翩翻と旗ひるがへり青嵐
裏口に「星のタンゴ」てふクレマチス
海霧や夕闇迫る時計台
箱庭や幽閉さるる偏屈王
袋小路狂つたやうに鳴る風鈴
緋のダリア夜行列車に顔を挙ぐ
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