2021年11月19日金曜日

令和三年 秋興帖 第一(仙田洋子・渕上信子・妹尾健太郎・坂間恒子)



仙田洋子
うさぎ小屋のにほひのむつと休暇明
ちちははの家の昏さや葛の花
チェンバロの音やんでをり秋の昼
空瓶で殴るせつなさ秋の浜
秋の蟬土蔵に罅のはしりけり
秋暑し墓地分譲の旗残る
踏切のかんかん鳴るや秋の暮


渕上信子
女郎花テレビ会議の背景に
秋の雷「昭和史」はいまB29
その花を想ひ出しつゝ石榴の実
コロナ禍や墓参叶はぬ今日子規忌
監督の名はMuscat美味しさう
彼岸花盛りを過ぎて鳶高し
長き夜の手紙の末尾with love


妹尾健太郎
旅ゆけば柿が鈴なり遠州路
打つ時を虚空へ飛ばす添水かな
藪枯何の倉庫か聞いたよな
いつからと思う時から虫の時
昼を君と何にもかむらない紫苑と


坂間恒子
曼珠沙華鉱毒事件おわらない
野牡丹の真昼を走る亀裂かな
夕暮れの鶴一羽いる違い棚