【秋興帖】
杉山久子何憑きし顔か葛の葉より女
夢に鹿森を生やして去りにけり
蚊の目玉スウプ一匙秋深し
神谷 波口を開けるのもめんどくさい残暑
大雨の後勢揃ひ曼珠沙華
アフガンをぞくぞく脱出あかとんぼ
明日は雨らし
ひかへめな嫦娥の艶や十四夜
ふけとしこあかちやんがバンザイしたよいわし雲
着崩しにしてもやりすぎレモン切る
団栗が降るぞ逢魔が時なるぞ
【夏興帖】
依光正樹鳥どちの若葉の中に光りけり
だんだんに老いし掌芒種かな
海に来て蚊遣の淡き色を見て
花茣蓙の上を走つていく子かな
依光陽子初蟬や樹齢等しき埋立地
新月に蟬と生れしか啼いてみん
夕立や手前の雨と奥の雨
逃したる鳥に囲まれ西日の家
佐藤りえ青芝を転がつてゆく児童ふたり
芭蕉葉の奥釣り人の二三ある
審判も汗拭いてゐる草野球
筑紫磐井遠い青春 美男美女美女避雷針
座談会に不遜なままでチエホフ忌
しばしば小諸に行ったっけ
美美のなき夏来たり夏逝きにけり