小林かんな魚津港へ女ぞくぞく稲雀
ひるがえる袂よ月は天心に
翌朝は蜻蛉流す石畳
八山の雨を束ねて鵙高く
山裾はまだ色づかぬ七竈
松下カロ欲ふかき両のこぶしの烏瓜
烏瓜アンダーライン錯綜し
不在票ちらつくあたり烏瓜
木村オサム老人の後ろ姿の虫の闇
ほおずきや大きめの服たまに着る
秋の蚊のときどき混ざる円周率
穴まどひ森に死体の多すぎて
冬瓜の放物線がラストシーン
夏木久黙祷の澄みゆく時を曼珠沙華
銀河辺り密やかに死を解凍す
蛍光色重ね傷付く葡萄の海
白朝顔海の底より忍び足
扇風機それは淋しき銀河船
声明を少し発条ある夜舟ゆく
死体より眼鏡離れて土星の環