林雅樹(澤)ブラックホールに吸はれ寒星減りゆける
アイドルカレンダーお渡し会の列にあり
マスクして私綺麗と問ふなかれ
行き会ひしコロナの精や
枯蓮の悄然として日本かな
水岩瞳まやかしの団結のありブロッコリー
星の子と手羽先食べる聖夜かな
山眠る懐紙小さく折りたたみ
バケツだけあつて此処です雪達磨
鬼やらひ鬼に妻いて子だくさん
佐藤りえなめて世を慰めてゐるしぐれかな
葛に喉ごくりと鳴らす近松忌
主はきませり韜晦室の暗夜にも
筑紫磐井ひと時雨あとで花やぐ美美の忌
何もなくてもこの一月の星凄し
滅亡の狼 兜太・敏雄も我も詠む
【歳旦帖】
浅沼 璞初日さす褥や虎の大あくび
初夢の色はだんだん宙に浮く
双六の無重力めく入歯かな
眞矢ひろみ初風の欠片となって走りけり
笑初してパスワード思い出す
大笑の死顔を練る初鏡
うつし世にながらふは意地手酌屠蘇
初句会妖人奇人税務員
下坂速穂何処よりも樹下の明るし初雀
輪飾りの昔も今も鳩の街
夜更かしをして早起きの足袋を履く
辰巳の名露地に残して松過ぎぬ
岬光世天平の調べ降り来る淑気かな
三味の音と女礼者へ出す珈琲
黒塀の店おほき坂餅の花