仙田洋子ありたけの椿と唇をふれあはす
見つめられすぎて椿の落ちにけり
うなだれて帰る子供や春夕焼
戦争の好きな人類鳥雲に
桜時雲の行方は知らぬまま
花鳥の声の眩しきほどに降る
好きなだけ大きな声を春の山
仲寒蟬まだ風呂を出て来ぬといふ受験生
だんまりの二三羽混じり百千鳥
望潮ハワイ年々近づき来
湖からの風まつすぐに雛の市
春昼を行く半分はすでに死者
春愁にベートーヴェンは重すぎる
碩学の朝の日課や目刺焼く
坂間恒子きさらぎのキリンとキリンすれちがう
モラトリアム同士擦れ合う春の小島
教科書にアンネの隠れ家鳥ぐもり