花尻万博長々と褶曲に生き蝶々らは
蜂の尻花の深さを出入りす
唇に人だけ透けて暖かし
おたまじゃくしに包まれる飴の色
鬼の子の位置ずれてゐる朧かな
背を追へば蝶々にも生の速さ
望月士郎白鳥帰る青うつくしくくちうつし
消印は 三月十一日海市
朧夜を歩く魚を踏まぬよう
月おぼろ幻獣図鑑に「ヒト」の項
フラスコの中のふらここ少年期
赤い風船青い風船口結ぶ
永き日の砂丘の砂時計工房
網野月を黄水仙自由身勝手独善者
パドドゥの老いの夫婦や春の泥
上あごに海苔張り付くや握り飯
桃東風や迷つて頼む興信所
啓龕や花屋の釣りの濡れてゐし
佐保姫の乱と言うには咲き降り
横流るのぞみの窓の穀雨の雨
曾根毅虚空蔵曼荼羅蝶の舞いはじむ
緋牡丹や閻魔の筆の柔らかく
戸袋の見え隠れする春の雷