瀬戸優理子塩壺の底に塩粒春吹雪
夕月のやさしき呼吸木の根開く
春眠の足りてまもなく降りる駅
引き返しふたつ買い足す桜餅
花の冷かたりことりと万華鏡
紙やすりめく北国の春鴉
春の闇首の釦が弾け飛ぶ
鷲津誠次うはずりて鶏啼きなほし山笑ふ
無骨なる石室照りし枝垂れ梅
草青む測量士らは肥満気味
花冷えや家宅捜査の段ボール
空爆に高き産声木の芽雨
木村オサム春だぞと言われあわてて埴輪顔
入学子からまず猿をつまみ出す
うすらひを越えていつもの精神科
やる気ない社員の背のヒヤシンス
四月馬鹿曲げたスプーンでカレー食う