下坂速穂木の痕に空の広がる余寒かな
猫柳きのふゆきすぎたる路の
朝見て夜見つめたる雛かな
目刺焼く夜の青空を帰り来て
岬光世花の種蒔きし故国の土の色
首ちぢめ漕ぎ続けたり半仙戯
春塵や風切羽を授かつて
依光正樹黄梅や運河にひとつ灯あり
料峭や訪ねあてたる寺ひとつ
髪切つて自由になりし春の雷
春昼の喉にやさしきレモネード
依光陽子犇犇と紅梅の咲き古びつつ
春の死を鳥の遺した羽根で弾く
新月のあるべき空や鳶の巣
ぱつと開くと同じ頁の春深し
下坂速穂木の痕に空の広がる余寒かな
岬光世花の種蒔きし故国の土の色
依光正樹黄梅や運河にひとつ灯あり
依光陽子犇犇と紅梅の咲き古びつつ
堀本吟みどりの日シルバーワークへ通うらん
高橋修宏一列の戦車の終わり見えず春
小沢麻結車捨て歩み行くなり春の雪
浅沼 璞まだそこに救急車ある蝶の昼
ふけとしこ印影も記憶も薄れ春の鴨
前北かおる(夏潮)着陸の窓を引つ搔く春の雨
松下カロ青き踏むビロードの中国靴で
渡邉美保透きとほる幻魚の干物春北風
眞矢ひろみ親ガチャに子ガチャと応ふ夜鷹かな
竹岡一郎涅槃会の鏡の夢が淵の渦
ふけとしこ印影も記憶も薄れ春の鴨