2022年6月3日金曜日

令和四年 春興帖 第六(眞矢ひろみ・竹岡一郎・ふけとしこ)



眞矢ひろみ
親ガチャに子ガチャと応ふ夜鷹かな
山雀の籤映る眼の恐ろしき
うららかに無用のありぬ橅林
春暁の夢の小径を瑠璃の象


竹岡一郎
涅槃会の鏡の夢が淵の渦
半生をよくぞ薄氷歩み来し
花篝散らす女系の血の鱗
反橋の頂きに照る花衣
空海忌印やはらかく結ぶべし
刃を入れて貝の震へを聴く暮春
惜春の蹄を支へ崖の意志


ふけとしこ
印影も記憶も薄れ春の鴨
菫濃し手に載るだけの石拾ひ
須磨浦や菫に風の吹きつけて