2022年6月10日金曜日

令和四年 春興帖 第七(ふけとしこ・前北かおる・松下カロ・渡邉美保)



ふけとしこ
印影も記憶も薄れ春の鴨
菫濃し手に載るだけの石拾ひ
須磨浦や菫に風の吹きつけて


前北かおる(夏潮)
着陸の窓を引つ搔く春の雨
うららかやへうたん島の滑走路
モッツァレラチーズのピッツァフリージア


松下カロ
青き踏むビロードの中国靴で
たんぽぽの絮ことごとく川へ落ち
建てるため何か壊して春の丘


渡邉美保
透きとほる幻魚の干物春北風
くろもじでつつけば鶯餅の鳴く
下萌えや置きつぱなしの絵具箱