2023年6月3日土曜日

令和五年 歳旦帖 第九(依光正樹・依光陽子・佐藤りえ)



依光正樹
初空のひるがへりたる砂時計
年の瀬や打ち残しある寺畑
見渡してまた家々の年詰まる
ひとりづつ枕のありて年の逝く


依光陽子
親指が剝いてゆきたる蜜柑かな
粘菌のやうに光らむ初御空
火の熱く煙の寒き伽藍かな
単音も和音も寒し耳は海


佐藤りえ
大年を歯痛と供に越えゆけり
歩調稍はづんでしまふ年の朝
音もなく犬の睫毛に暮れてゆく