2023年6月16日金曜日

令和五年 春興帖 第二/歳旦帖 補遺(杉山久子・小野裕三・神谷 波・ふけとしこ・筑紫磐井・鷲津誠次)

【春興帖】

杉山久子
鳥の巣を垂れて何やら赤きもの
就活も終活もして四月馬鹿
人類に少しの未来桜咲く


小野裕三
垂直に水音溜めるチューリップ
卒業の足踏ん張っていたりけり
遠足の螺旋階段下りていく
七色のうちのひとつが桜鯛
惜春のカレー魔術のごとく煮る


神谷 波
宿り木の吐息のやうなもの余寒
ぐらぐらと湯が沸き恋の猫の声
猫だつて首を傾げる紫木蓮
花過ぎのコンクリートの上に蚯蚓


ふけとしこ
鳥雲に御納戸色の栞紐
箒目の深きところへ落椿
落椿玄武の首に載るもあり


【歳旦帖】

筑紫磐井
初芝居洒落にもならぬ澤瀉屋
山だけが宝や信濃一月は
ひとすぢの背筋あふれ初山河


鷲津誠次
数え日の叔父は懲りなく旅支度
悪友の喪中葉書や年詰まる
社宅にはひとつの灯り大晦日
靴溢るる子ども食堂福寿草