杉山久子鳥の巣を垂れて何やら赤きもの
就活も終活もして四月馬鹿
人類に少しの未来桜咲く
小野裕三垂直に水音溜めるチューリップ
卒業の足踏ん張っていたりけり
遠足の螺旋階段下りていく
七色のうちのひとつが桜鯛
惜春のカレー魔術のごとく煮る
神谷 波宿り木の吐息のやうなもの余寒
ぐらぐらと湯が沸き恋の猫の声
猫だつて首を傾げる紫木蓮
花過ぎのコンクリートの上に蚯蚓
ふけとしこ鳥雲に御納戸色の栞紐
箒目の深きところへ落椿
落椿玄武の首に載るもあり
【歳旦帖】
筑紫磐井初芝居洒落にもならぬ澤瀉屋
山だけが宝や信濃一月は
ひとすぢの背筋あふれ初山河
鷲津誠次数え日の叔父は懲りなく旅支度
悪友の喪中葉書や年詰まる
社宅にはひとつの灯り大晦日
靴溢るる子ども食堂福寿草