仙田洋子春装の一歩大きく踏み出しぬ
自転車の上ゆさゆさと桜かな
夕桜山姥も髪なびかせて
夜桜や母にあやしき血の流れ
夜桜や首吊る縄のぶらぶらと
夜桜やふつふつと血の沸きはじむ
春の水十指を抜いてしづかなり
大井恒行降るはみな花にはあらずきのこ雲
林檎の花かの痛点に至りけり
水際にかげろう白き花ゆすら
【冬興帖】
水けむる川を見ている遅刻かな
狐火のかなた電気のとどこほる
泣きながら天ぷら揚げる冬茜
シリウスや身ぬちに炎抱きたり
空港に狐火混ざる帰国便
決戦のように並んで冬薔薇
白菜を祝うがごとく抱えけり
赤い陽の赤い毛布の赤い人
吾子のため童話を紡ぐ冬銀河
大寒の朝湯賑わう介護園
定年まで指折る日々よ川千鳥
五島高資縄跳びや夕日のあとに誰か入る
水けむる川を見ている遅刻かな
狐火のかなた電気のとどこほる
泣きながら天ぷら揚げる冬茜
シリウスや身ぬちに炎抱きたり
小野裕三目撃者だけを集めて兎狩
空港に狐火混ざる帰国便
決戦のように並んで冬薔薇
白菜を祝うがごとく抱えけり
赤い陽の赤い毛布の赤い人
鷲津誠次湯気立てて父母に捧げん私小説
吾子のため童話を紡ぐ冬銀河
大寒の朝湯賑わう介護園
定年まで指折る日々よ川千鳥