2023年7月21日金曜日

令和五年 花鳥篇 第二(山本敏倖・小林かんな・仲寒蟬)



山本敏倖
飛花二片紺屋町へと迷い込む
根本さん()のつばくろで通じます
骨格に浮力を付ける花明かり
たましいの裏側路地の濃紫陽花
その微笑守宮のように懐かしく


小林かんな
酒は辛口六甲に山滴る
春陰を船出すように蔵人ら
だんじりの金よ五月の雲映る
魚崎の魚影の速さ花くるみ
青簾下ろして松子夫人は留守


仲寒蟬
先代の夜逃げの話田螺和
山中に巨大パラボラ風光る
寄居虫に体当たりされポリバケツ
球審の拳の先を初つばめ
たんぽぽの絮八十億人の星
下手な歌けふも聴かされ熱帯魚
筍を焼きをる方が拾得か