辻村麻乃サイダーに頬当て友のかたえくぼ
風と陽を交互に受くる山法師
栴檀や小舟にゆさと垂れゐたる
睡蓮の花に纏はる捷き鯉
水面にぴたり咲きたるひつじ草
ぱつと来てぱつと帰れり黒揚羽
またしても妻の話やアイスティー
竹岡一郎春泥に首までつかり喚いてら
電話口より纏はるが井の朧
五月忌まぶた開け閉ぢ一日果つ
乱鶯の
土用浪へと生霊を背負投
鵺の律らふそくの火ののびちぢみ
早瀬恵子母の日に猫の手招きエンゼルケア
胸高きおんなの顔にもどる夏
メルシーの祖母の午睡やアメジスト
屋号は「澤瀉」天国の定式幕
木村オサムまだ戦なのかとさくら散りにけり
核戦争あぢさゐ押しただけなのに
緑陰の紅茶ふらんす風和解
蛇苺食うて来世の腹満たす
太陽の中心にある黒い薔薇