辻村麻乃動かざる花に花人動きたり
萼片の五枚の揺らぎ節分草
鬣に風を孕みて厩出し
花かたくり秩父の土と引合へり
蝶二頭高く翔びたる保存林
耕人に短き影の付き纏ふ
歯の抜けるやうに散りたる花辛夷
竹岡一郎降る花に交じる鱗をことづてと
妓をかこむ奔流として雪柳
菜種河豚づくしの膳をふるまはる
鏡像の右手ひだりに映る朧
蝶湧くを見し葬儀屋はきびきびと
早瀬恵子ウイルスと一刻者とタテの春
ウ(ベン)一山僧侶の空の高野槇
天晴な実家の片づけ揚羽蝶
星めくやあのねのあなた霞草
木村オサムガウディの佇んでいる春の泥
とぼとぼと行けば渡れる薄氷
理科室のビーカー光り卒業す
蛤の中は弥勒の舞ふ宇宙
足跡でだいたいわかる四月馬鹿