ふけとしこ垂直に虹立つ草原ならば行く
熱中症警戒アラート鷺白し
雷が近しハシビロコウが立ち
仲寒蟬呼び捨てにして信長の忌なりけり
バビロンの滅亡に似て牡丹散る
首を振る鳩が許せず夕涼み
扇風機旧知のごとくささやける
兜虫関節痛さうに歩く
賓客は舟にて来たり燕子花
放ちたる金魚ふたたび掬はるる
豊里友行天体をたぐる音叉の赤ん坊
魚群の民意へ大浦湾の杭
銀河系蠅一点の集中力
天体のワルツが弾む林檎飴
一挙一動の宇宙よ兜虫
PFASの疑念湧く水筒も眼玉
赤子泣く此処は天体オーケストラ
【秋興帖】
曾根毅青饅の歯に挟まりし運動会
流れ星のイエスが過ぎて鱗と漁夫
青天渺渺火に包まれし鶏頭花
大井恒行秋灯下多摩蘭坂の古本屋
翳る秋父は何処の雲に鳥
秋鮭の卵こぼして波だてり
仙田洋子還暦を過ぎをみなへしをとこへし
蕎麦の花淋しきときは声を出し
垂直の虹の切れ端台風過
鳥も子もすでに眠りぬけふの月
眠りゐる鸚哥をつつく良夜かな
年寄の日の年寄の酔つ払ひ
戦争の惑星の空鳥渡る