2026年2月13日金曜日

令和七年 秋興帖 第八(下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子)



下坂速穂
木のこゑにはたと耳寄せ生身魂
走馬灯すつと兎のとほらむか
椅子の背の固き列車よつくつくし
棉吹くや古き映画の中に風


岬光世
時のなき猫の待ちたる鰯雲
マグリットの空より入る美術展
黄落を聴く彼の人の指づかひ


依光正樹
マスカラが落ちて秋の雲降りて来る
梨の皮剝く人の手を見るやうに
隣ゐれば引き立つ女爽やかに
篝火に集まる虫の未だみどり


依光陽子
造花にも裏と表や秋の暮
身に入みて天邪鬼だと自認せる
柿食うて点滴の手がひらめけり
小鳥来る石工の目にはいつも石