2014年10月3日金曜日

平成二十六年夏興帖, 第六(中山奈々・もてきまり・山本たくや・仮屋賢一・木田智美・小澤麻結・瀬越悠矢・栗山 心)



中山奈々(「百鳥」「里」)
棚に本戻し忘れて百日紅
夾竹桃分けるなら天才の類
鳴き真似に飽きず百日紅の木蔭
短絡にして短気なり夾竹桃
百日紅零るる酒を拭ふ指



もてきまり( らん同人 )
蝶々魚群れて不眠をつつきをり
夏夕べ尻尾の見へる嘘つぱち
極楽はやたら退屈なめくぢり



山本たくや(「船団」・「ふらここ」所属)
淋しさにぷるぷる短夜のゼリー
猿山の猿が群がる盆休み
ハイビスカスあかんべーしたら帰る
陽炎に這いつくばって水を飲む
車椅子ブリキの人体夏野へと



仮屋賢一(関西俳句会「ふらここ」代表)
炎天のはやイーゼルの高さまで
背景に広めの海を熱帯魚
茅の輪にもくぐる人にも拝みけり
舟虫を解散させてから帰る
二客ずつ揃へて淹るや夜の秋
盆踊をどれぬ人を手本とし 



木田智美(関西俳句会「ふらここ」)
ベランダに犬逃げている午後の四時
ボート小屋スネ夫が自慢話する
わたしwithお父さんwith羽抜鳥
アロハシャツ飛行機に乗るふなっしー
ひまわりの向こうに走る馬を見る



小澤麻結(「知音」同人)
葛切や相槌は瞬きをもて
時雨亭跡へと蝮出づる径
足指に日の当りをり昼寝覚



瀬越悠矢
いにしへの躰押し合ふ海月かな
蛍火や生まれて何を忘れたる
求愛の鱏の天地の背と背



栗山 心(「都市」同人)  
片蔭をたどりて家系ラーメン屋
NO VACANCYと赤きネオンや大暑の日
昼席の地下劇場の蚊遣りかな