2014年10月17日金曜日

平成二十六年秋興帖,第一 (髙勢祥子・曾根 毅・原雅子・神谷波・内村恭子・陽 美保子・小野裕三)


髙勢祥子(「街」「鬼」所属)
秋晴や飛び立つもののやうに爪
秋蝶がよぎると再会の如し
仰向けや死にゆく蟬も眠る子も
秋の馬胸叩かれて固くなる



曾根 毅(「LOTUS」同人)
穭田や校長は髭光らせて
背表紙を眺めておれば桐一葉
消防車数台過ぎし秋の雨



原雅子
涼しさの秋ともなれば肘枕
秋祭笛方のまだととのはず
赤蜻蛉恐る恐るの逆立ちに



神谷波
駆け込みはやめてください釣瓶落し
吊革を掴み残暑の名古屋まで
草間彌生的雑踏秋暑し
沢庵で試す切れ味後の月



内村恭子 (「天為」同人)
木漏れ日に大樹冷たき今朝の秋
秋高しパルプは白き紙となる
一族郎党眠る墓あり月清か



陽 美保子(「泉」同人)
  面会謝絶と聞きて
橡の実をひとつ拾ひぬ師よ如何に
橡の実を置きたる音の立ちにけり
橡の実を割りて生まれぬ夜の翳



小野裕三(「海程」「豆の木」)
螺旋階段鳥の眼の空白
生身魂ささやかな水呑みにけり
秋冷えて棒の周りをよく廻る
昼の虫ラジオの笑い籠もる屋根
カタカナの賑わい愉し神無月