2014年10月24日金曜日

平成二十六年 秋興帖,第二  (藤田踏青・前北かおる・福田葉子・ふけとしこ・堀本 吟・中村猛虎・杉山久子)




藤田踏青
尾行を逃れ静物画となるいとど
待宵の引力が隠れ蓑
菊酒を掌に眠そうな母音
敵前にとび出たバッタの句読点
菊人形S字カーブで脱線する
蔦紅葉経帷子の廃屋語り


前北かおる(「夏潮」)
俳句甲子園出身守武忌
コンタクトはづし夜長の団欒に
色草や山荘の子に幼児バス



福田葉子
落栗を焼いて固陋を通しける
満月は七宝のごと山の端に
ペガサスの鬣燃えよ天の沖



ふけとしこ
ヤットコとラジオペンチと秋の日を
アッテンボロー逝く空缶へ秋の雨
蟷螂よ箝口令を敷かれたか



堀本 吟
来島海峡       
混乱や小さな渦は鏡とも
秋思曳く来島海峡渦いくつ
秋の蚊や渦のいちばん底にまで
海上を川の流れる夜這い星
渦中ただ懐中時計トンボの目



中村猛虎(1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。)
デビルマン東京タワーに座す良夜
秋の虹触れれば明日死ぬかもよ
電話機に電話線ある夜の秋
秋袷生涯抱きし女の数
ドラえもんの鈴の鳴らない秋日和



杉山久子
秋の蚊の脚のふれゆく広辞苑
点描のごとく根釣の人の影
星の夜の葡萄をつつむ雫かな