陽 美保子(「泉」)数へ日のびつくり水を加へたる
子と頒かつ夜の駄菓子も小晦日
覚めてしばらく初夢の中にをり
木村オサム(「玄鳥」)磯野家の黒電話鳴る大旦
難破船出身うちの嫁が君
平然と不安を競ふごまめかな
月野ぽぽな島ひかりつつ新しき年に入る
南天の実とは悩みのない実なり
初夢の鱗一枚ずつ光
山田耕司初空や鹽壺に鹽の谷浅く
牛肉の牛を去ること久し春
粥杖をもたされてゐて長廊下
佐藤りえてのひらで飲めば温とき若水か
若水に溶けて見えなくなる薬
裏白を挟んで去年の新聞紙
大服や音量を絞ると言へよ
旧道に人増えてゐる二日かな
竹岡一郎(「鷹」同人)去年今年砂漠の聖地死が飛び交ふ
花街は鴉闊歩や初旦
少年が恋に勇めり初詣
坂間恒子(「豈」「遊牧」同人)初富士や自由席からおはよう
金の鯉胸びれ動く初御空
読初や「子供の貧困」てふⅠⅡ