2015年1月16日金曜日

平成二十七年歳旦帖、第二 (陽 美保子・木村オサム・月野ぽぽな・山田耕司・佐藤りえ・竹岡一郎・坂間恒子)



陽 美保子(「泉」)
数へ日のびつくり水を加へたる
子と頒かつ夜の駄菓子も小晦日
覚めてしばらく初夢の中にをり


木村オサム(「玄鳥」)
磯野家の黒電話鳴る大旦
難破船出身うちの嫁が君
平然と不安を競ふごまめかな


月野ぽぽな
島ひかりつつ新しき年に入る
南天の実とは悩みのない実なり
初夢の鱗一枚ずつ光


山田耕司
初空や鹽壺に鹽の谷浅く
牛肉の牛を去ること久し春
粥杖をもたされてゐて長廊下


佐藤りえ
てのひらで飲めば温とき若水か
若水に溶けて見えなくなる薬
裏白を挟んで去年の新聞紙
大服や音量を絞ると言へよ
旧道に人増えてゐる二日かな


竹岡一郎(「鷹」同人)
去年今年砂漠の聖地死が飛び交ふ
花街は鴉闊歩や初旦
少年が恋に勇めり初詣



坂間恒子(「豈」「遊牧」同人)
初富士や自由席からおはよう
金の鯉胸びれ動く初御空
読初や「子供の貧困」てふⅠⅡ