2015年1月9日金曜日

平成二十七年歳旦帖、第一 (青山茂根・網野月を・曾根 毅・しなだしん・五島高資・仲寒蟬・小林苑を・夏木久)



青山茂根
消失点ふたつを初景色に宿し
かたまつて座る元旦の乾いた風
門松を蹴らない少年が叫ぶ


網野月を
左白右赤にして供え餅
七福神に異国の神のおわすなり
一人で食べてもお節料理になりません
日月の飾りは無くて門の松


曾根 毅(「LOTUS」同人)
大きすぎる海老の尻尾や祝箸
幾重にも橋の架かりし初霞
繋ぎ止められたるものや初明り


しなだしん
もう何も語らずにをる世継榾
日の本の国の一月一日かな
雪積むや山国に燈のたつぷりと


五島高資
昇りつつ蔦の枯れゆく炎かな
高野槙なおしも果の大師かな
巴なす鷹や天皇誕生日
寝過ごして降り立つ冬の銀河かな
白鳥の天つ水影に泊てにけり
黄昏の富士や大呂の響きあり
裏白に餅の羽ばたくけしきあり


仲寒蟬
 雑煮餅顎の小さき女たち
年酒酌む死ぬ気がせぬと言ふ人と
出番待ちをり正月の粗大ゴミ
建物の裏に階段去年今年
人生も死もあまく見て雑煮椀
初日記天気のことを書きしのみ
おのづから声高になる初電話


小林苑を(「里」「月天」「塵風」「百句会」所属)
初夢の洞穴どこまでもつづく
鉄腕アトム途切れて馬場の寒夕焼
水洟や生物進化大図鑑


夏木久(「豈」「連衆」)
これやこのゆくもかへるも去年今年
すくと立てど影の戦げり初明り
月山を下げて白鳥南下せる