2015年1月23日金曜日

平成二十七年歳旦帖、第三 (杉山久子・小沢麻結・堀本 吟・中山奈々・北川美美・山本敏倖・寺田人・仮屋賢一)


杉山久子
御降りに佇む雀鴉鳩
ガンマンの出でて正月映画かな
稲積むや猫の寝息のかたはらに


小沢麻結
年神はお転婆疾風操りて
あらたまのウエートレスの天使系
女王の座をとりにゆく歌かるた


堀本 吟
「UNIQLO」の赤い看板去年今年 
金毛羊皮のジャケットや初光 
羊鳴く声を先立て年明ける


中山奈々(「百鳥」「里」同人、「手紙」「くまねこ」居候)
馬の出て来ぬ新春の西部劇
アーモンド大佐へ初鴉の嗚呼
女礼者を娶る族長ピスタチオ
蘿蔔をミックスナッツ夫人より
幸木に吊るす見習ひピーナッツ


北川美美
初春の柵はなたれて羊かな
南南西の風に乗る凧
探梅の峠を越えて梅もなし


山本敏倖
酔うて一歩を元旦に踏み入れる
正月やふりさけみれば無精卵
あんどろめだせいうんのめだふゆきのめだ
組香の一つが狐火呼んでいる
RHマイナス型の雪の精


寺田人(「H2O」「ふらここ」「くかいぷち」)
神具の如き風鳴りや大晦日
去年今年姓変わりたる弟よ
元旦を良き人生の柱とす
魚閃くハンカチーフや四日果つ
ゐなき君の幅のありける蒲団かな
喧嘩した昨日愛しき六日かな
女てふ苦きは祝へ夜寒なり


仮屋賢一(関西俳句会「ふらここ」代表)
元日の勝手に上がる勝手口
二日はや巫女に俗世の言辞あり
雪すでに錆の色ある三日かな
介護士の鼻唄古き四日かな
人に影踏まれ五日の停留所
自転車の首傾げをる六日かな
飯釜に杓文字の憩ふ七日かな