2015年10月2日金曜日

平成二十七年秋興帖 第三 (五島高資・山本敏倖・網野月を・岡田由季・音羽紅子)




五島高資
昼の野に星の降るなり岩煙草
九字切りて手刀おさめる律の風
寝過ごしてひとり降り立つ銀河かな




山本敏倖(豈・山河)
ボクとぼく野菊を挟み戦争す
どの顔で扉を開ける鳥兜
サインコサイン三日月から落っこちる
いずこまで尻尾を伸ばす秋風鈴
あっ花火だ引っ込んだ手が触れてくる




網野月を
濁音と半濁音の滝の秋
青恋し停まって見上ぐ空の秋
秋は秋褪せて乾いてたじろがず
秋高しトロンプルイユに同化する
白き風半月輪欠く五輪塔




岡田由季(炎環・豆の木)
物言はぬ臓器と色を変へぬ松 
朗読の会桔梗が水を吸ふ 
鹿二頭生放送を横切りぬ




音羽紅子
コスモスのまだ小さきに風の来て
振り返る人のいなくて芒原
十五夜や誰も住まなくなつた家