2015年10月9日金曜日

平成二十七年秋興帖 第四(淺津 大雅・仮屋賢一・大瀬良陽生・神谷波・仲寒蟬)



淺津 大雅(「ふらここ」)
 城端むぎや祭三句
犬に夢中なり踊笠背負ひたる子
旅行者の撮る旅行者の笠踊
節の間に地へとんと突く踊笠

 東尋坊三句
露草や風に靡かぬ句碑三つ
青北風や崖上に子をかゝへ立つ
東映の三角出てきさうな海




仮屋賢一(関西俳句会「ふらここ」代表)
村芝居犬啼くたびに驚けり
きちきちのいちいち刻をすすめゆく
咲くときはまだ風知らぬ秋桜
弟子とらぬ貌の案山子の傾ぎをり
秋没日褒め合ふときの敬語かな
衣被名を訊くためにまづ名乗る
こほろぎや遅れて点きし厠の灯



大瀬良陽生
七夕や来世は何に生まれよう
蚯蚓鳴く星の見えざることに慣れ
天高し番狂わせを成し遂げて
爽やかや居合の親子向かい合ふ
日の丸く出て半月を生みにけり
卵焼き買ふ贅沢や秋の暮



神谷波
冬瓜を食べやすやすと眠りけり
稲妻や瞬きゆつくりアンドロイド
肉付きのよき舞茸の下半身
かろやかすぎ敬老の日の竹とんぼ



仲寒蟬
八月や南を上にアジア地図
星辰のずれる音して渡り鳥
跫音を聞かれてはだめ曼珠沙華
露けしや猫が水飲む舌の音
ストローをのぼる液体今日の月