2015年10月23日金曜日

平成二十七年秋興帖 第六 (もてきまり・木村オサム・仲田陽子・月野ぽぽな・関根誠子・ななかまど・真崎一恵・とこうわらび・川嶋ぱんだ)



もてきまり
前の世の情事の余韻萩こぼれ
鬼なれば骨盤で漕ぐすすき原
逝くまでは次頁つづく野分かな



木村オサム(「玄鳥」)
目の前の烏瓜より説得す
飲み忘れた薬飛び出す鳳仙花
ニュートンの林檎売り物にはならず
聖骸布開いて芋の類出す
鼻孔より通じる永遠の芒原




仲田陽子
紙ヤスリかけても良夜凹凸す
小鳥来る致死の絵具を使いきり
鵙鳴くや足ばかり描くクロッキー
流星の捨てられている裏出口
ひと昔前を行くなり猫じゃらし





月野ぽぽな(「海程」)
水よりも水音澄みわたる夕べ
土にある戦の記憶曼珠沙華
うつしき引っ掻き傷よ流星は




関根誠子(寒雷・炎環・や・つうの会)
百日がもう了るのね百日紅
椿の実すこし歯を見せ行き違ふ
体内のしづかな秋を胃カメラは




ななかまど((   )俳句会)
満月を香ばしく焼く日曜日
武庫川に月見団子の降る心地
鉄棒をぐるりと回って星月夜
玻璃戸上り桔梗の花の開く音
栗飯の粒柔らかく片想い
平皿に檸檬潰れて死んでいる



真崎一恵 ((   )俳句会)
秋風や底意地悪いクロワッサン
秋の川靴に魚の棲んでをり
左手に小説右手には秋気
蚯蚓鳴く後ろで叫ぶ洗濯機
いつだって梅酒ばかりね蚯蚓鳴く
名月や肌荒れ気味の顔周り
秋茄子の顔を思い出して電話



とこうわらび ((   )俳句会)
送り火に送られゆくや夜の道
葡萄の実皮むくひまも待ちきれず
食卓に堂々と立つむかご飯
雨のたび一歩遠のく残暑かな
コスモスの波に揺れたるわが心



川嶋ぱんだ ((   )俳句会、船団の会)
初紅葉椅子よりながい君の脚
手をつなぐときは静かな秋の夜
路地裏を通って帰る月見かな
言うことを聞けよ十六夜まで待てよ
紅葉且つ散ってあなたを抱きしめる