神谷波十一月海月のごとく過ぎゆけり
ねつとりと枯蟷螂の視線かな
隣席はどちらも他人日短か
凍て雲が猟銃の音撥ね返す
狙はれて鴨は声なく落ちてくる
仲寒蟬しぐるるや橋の向かうは見知らぬ村
誰も来て影おいてゆく冬泉
手袋の出口さがして薬指
海鼠より海鼠の思ひあふれ出す
枯蓮や空の半分晴れてゐて
岡田由季(炎環・豆の木)北風や鏡面何も受け入れず
コーランの一字も読めず帰り花
雪眼鏡かけたつぷりと雪を見る
小林苑をクリスマスツリー淋しい犬通る
冬銀河濃し国境は越えられる
落とし蓋して大根のぐらぐらす
福田葉子月光へ父の目うるむ憂国忌
冬めくカフェ ゴッホの星の瞬きて
昭和平成生きて霜夜の実母散
浅沼 璞脇さむき女力士の土俵際
落ちませぬ小春太夫が自家発電
暁の反吐は拙者か寒鴉
若年性痴呆空白古日記