椿屋実梛きまぐれに京都まできて祭髪
八朔の花街に咲く京ことば
白粉の香がとほり過ぐ舞妓過ぐ
先斗町蛇の目の日傘前をゆく
普段着の浴衣で舞妓路地をゆく
舞妓の名ずらりと壁に花団扇
浅沼 璞爪に苔咲くかに苔をとぎゐたる
蜥蜴ぺしやんこ見下ろせる峠道
梅雨鯰いびきも紫に染まり
堀本吟(晩夏の鬱)
青すすきうす紙をはぐ夜明け色
カルピスをうすめてマンホールに注ぐ
金箔は晩夏の鬱の憂さ鬱(ふさ)ぐ
岸本尚毅梅雨にして秋のやうなる園淋し
一面のまだらの雲や茅の輪立つ
冷し飴売りて無学を誇るなり
一人棲む裸の人や釣忍
風鈴や八畳の間に我一人
半裂に見えず半裂しか居らず
ペンキ濡れば又新しや避暑の宿
石童庵ジプシーの汗は働く汗ならず
泥棒が稼業の民の汗臭ふ
ナポリ見て死ぬ気さらさら羽抜鶏
炎天下人の苦悶の虚(うろ)残る
オリーブ稔る村やジュゼッペ・シモネッタ
高橋比呂子処暑きたりおおきな蔵にまどひとつ
まつことはうとうやすかた白露めく
下北に処暑きたりて避雷針
処暑たのし言問団子ひとつあり
立秋やおおきな泪つるしたり