渡邉美保地ビールや黄昏どきの鶏の皮
あめゆあります三条油小路町
乱反射して川面より夏深む
渕上信子かたつむり足跡の銀色
薔薇薔薇苑を食みだして咲く
孳尾みしままに蟬乾きをり
蠅集る死に近づけば増え
紙魚は太りぬ『野火』に『俘虜記』に
真面目になれば八月は無季
夏帽子鸚哥が「アホンダラ!」
五島高資みどりから青へみちのく深まれり
五次元の寄せるみぎはや時計草
明星の微笑み返す蓮の花
夏草や貨車は傾きつつ曲がる
舟虫を散らせし人の影となる
富士山の艫綱を解く夕焼かな
筑波嶺やムー大陸の青岬
坂間恒子炎天の地を擦る縄のあそびかな
闇よりもさきに夕顔となっており
踝にきく夕顔の息遣い
前北かおる(夏潮)夜の秋火の衰へを見守りて
段ボール燃やしキャンプの朝かな
朝蝉やよろしくぬるき露天風呂
辻村麻乃緊縛の観音転がる夏の果
パードレの如き男と夏の山
腕中にぐるり湿布の金魚売
一匹の一匹を追ふ金魚かな
手際良き夜店の香具師や手に黒子