夏木久構造的欠陥のまま走り梅雨
助動詞の初動捜査を間違へり
黍嵐次の選挙をざわつける
向日葵な立往生の噂立つ
モンスーン放送局を妄想す
八月の霊は幽かでをれぬなり
熱帯夜パセリな夢を抱きしめて
網野月を免許証に別人の顔道おしえ
土用鰻火災報知器点いたまま
ボルダリングすれば守宮の心かな
GよG来世はきっとカブトムシ
板襖越しの人声麦こがし
空色の海海色の空夏一つ
夏果てて掴む乳房に故郷を
花尻万博蟻渡る光の川の小さい傷
黄泉の水上りし紫蘇を思ひ出す
繋がれて昼顔といふ確かさよ
飛ぶ鳥の夜明けてゆけり茄子の花
灯取虫光と翳る身を晒して
木の国の支柱を青蔦として探し
ふけとしこ万華鏡へ入れるとすればこの金魚
明星山三室戸寺なる蜂蝉鐘
八時十五分夾竹桃もサルビアも
曾根 毅滑莧海より遠く在りしかな
青葉闇土偶の孔と繋がれり
しみじみと蛍を抜けて来たるかな
加藤知子夏兆す大河に仮眠ありにけり
水中花睡眠障害症候群
定家かずら雲水美僧についてゆく
炎天として震洋艇とすれ違う
行水やさよならだけが祖国愛