仙田洋子りんりんとベル鳴りにけり夏旺ん
おとろへし女にたかる藪蚊かな
草むしるたびに小さき蟻の湧き
沖縄 四句
太陽のどつとふくらむ暑さかな
恋疲れしてはプールの底を見る
酒漬けの飯匙倩かつと口ひらきけり
星空に溺るるごとしハンモック
小野裕三夏の人体空を飛ぶのも仕事です
海見えて「海」と声上げバス暑し
貴石売られゆくを眺める端居かな
悪魔には尖った尻尾夏の雨
松下カロ噴水の向うに他郷ありにけり
レース編むマリーアントワネットの髪で
ひまはりと影を重ねて抱き合ふ
仲寒蟬そんな人簡単服で会ふほどの
超新星爆発優曇華そよぎけり
真向ひに髭面座るところてん
青嵐山の向かうを子は知らず
食ふものも食はるるものも泉へと
蠅叩大凡人といふ境地
コンビニに列をなしたる祭足袋
【秋興帖】
神谷波朝顔や瓜坊兄弟回れ右
青瓢夕陽が夕陽らしくなる
しんがりをあひつとめます法師蝉
留守番に芭蕉のさやぐ軒端かな
いつもどほり隣家に明かり十六夜
哀願調猫の鳴き声釣瓶落とし
杉山久子関取の躰へ伸びる無数の手
銀杏を踏みし肉球匂ひけり
ライバルの菊をまづ見る品評会
木村オサム短命の家系かまきり仁王立ち
脇腹のぜい肉つまむ蚯蚓鳴く
電磁波をしばし忘れて虫時雨
天高しジャブは打ったらすぐ戻す
平和とは桃の産毛を思ふこと
坂間恒子秋刀魚の骨きれいにはずす外科医かな
漁港の秋原稿用紙燃え上がる
銀木犀その奧疾走オートバイ