2020年1月10日金曜日

令和元年 冬興帖 第二/令和二年 歳旦帖 第一(小林かんな・池田澄子・辻村麻乃・内村恭子・中村猛虎・夏木久)

明けましておめでとうございます。
昨年から、俳句帖の掲載ペースが落ちており、出来るだけ季節感と合わせるために、複数の季節を同時掲載することとしました。現在夏興帖は終わり、秋興帖と冬興帖の掲載が進んでいますが、まだ当分同時掲載が続くと思います。このような中で恐縮ですが、歳旦帖を開始させていただきます。
このため、掲載が遅れている方、また掲載にあたり秋と冬の掲載の順番が変わっている方から問い合わせを頂いています。BLOG参加者にはご迷惑をおかけいたしますがご宥恕ください。

筑紫磐井


【冬興帖】
小林かんな
太陽の塔へ冬日のモノレール
着ぶくれて亜細亜の百の仮面の前
死者包む装束の紐冬の蝶
小春日のサバニの上に魚籠と櫂
ゆりかごも呪術の品も藁仕事


池田澄子
冬ざくら谷へこぼるるしずけさよ
凍月夜しずかになさい紙袋
膝掛毛布催眠剤を飲むか否か
寒き夜のひとりのお茶の濃すぎたる
雪の気配うしみつどきを寝そびれて


辻村麻乃
鐘島に波の鳴りたる冬夕焼
航跡波うねりてきたる鰤起し
路地裏の路地を迷いて冬花火
一艘の呑まれゆきたる冬紅葉
長瀞に石の積まれて冬うらら
燦燦と擬宝珠に冬陽跳ねゐたる
虚無と云ふ鬼の底這ふ十二月


内村恭子
雪の高野手に手に幣を携へて
寒暁や僧の手が撒く紙の蓮
勤行に凍つる手合はす夜明かな
手を組みて宇宙は遥か息白し
胼の手で修行の僧が運ぶ膳


中村猛虎
唇を這わせて進む大枯野
懐手袂に触るる龍角散
冬の稲妻撃ち抜け心臓はここだ
食パンに入れる刃の音冬に入る
枯野人明日履くための靴磨く
悴んでいても今夜も生きている


夏木久
小春日へ箸落としましたねあなた
歓談をしつつお昼を雪達磨
非難甘受冬へ脚立を立てかけて
裏窓や朝日の当たる駅その他
出口だと?そいつは冬の入口だ
金継や偶に傷口べろつと舐め
さうだらう南瓜の返事はNOだらう


【歳旦帖】
辻村麻乃
おでんから引いては足して銀の匙
冬花火上がりで山の定まりぬ
五千頭の龍冬天を睨みをり
足裏より凍突き上ぐる大伽藍
礫岩層十指に余る初御空