2020年9月4日金曜日

令和二年 夏興帖 第五(木村オサム・林雅樹・小林かんな・岸本尚毅)



木村オサム
熟睡の脳の彩りところてん
ため息で膨らましたる蛇の殻
目薬をさして金魚の眼を思ふ
うなだれる神父クルスに羽抜鶏
向日葵を一つ残してシェルターへ


林雅樹(澤)
一向に鳴らぬ風鈴コロナ欝
ステイホームゴキブリを飼ひはじめました
へこみたるガードレールや夏休み
金魚釣る暗き屋内釣堀に
かまつてちよかまつてちよ首筋に汗


小林かんな
昆布刈る父は舳先に子は艫に
林蔵の歩いた大地てんとむし
オホーツクと叫ぶ先陣雪渓を
泉へのこみち白樺ダケカンバ
蝦夷富士のてっぺん見えてハンカチ干す


岸本尚毅
咲いてゐる薔薇あざやかに草いきれ
軍艦の入り来る港花氷
病葉や整然として芝淋し
富める祖父やさしき父や避暑たのし
鏡台の横なる避暑の男かな
七夕のものゆさゆさと風の中
蜻蛉飛ぶ頃となりつつ薔薇園も