2020年9月25日金曜日

令和二年 夏興帖 第八(なつはづき・渡邉美保・前北かおる・浜脇不如帰)



なつはづき
青葉騒悲しいときは歯を磨く
風鈴や誰かの思い出にわたし
日雷荷台に剥き出しのギター
急に真顔ボートを揺らすひとことに
途中からハミングになるソーダ水
叶わないくちづけが浮く金魚玉
水中花ベッドの下という魔界


渡邉美保
葉桜のトンネルつひに抜けられず
鰺割きの欠けし切つ先晩夏光
川岸の流木を蟻走りゆく


前北かおる(夏潮)
二の腕をさはりにくる子早桃むく
コンビニのかち割り氷首にあて
地下の扉をひらけばごつた返す夏


浜脇不如帰
「じゅうじか」や百割引の鉄火巻
陽子にはまるでふれずに海水浴
打水や青信号で白いトコ
人力車いわしみず足す男梅
雲海は宙が自ら諦めた
むらさきの充つるイケイケ作り舟
梅雨茸は星をそこまで謳わずも