池田澄子橡咲いていて茫然と空厚し
伸べし手をウフッとよけたでしょ揚羽
日本は初夏テレビにきらきら焼夷弾
真夜を猛暑のテレビニュースに文句あり
八月十五日テレビを点けっぱなし
夏百夜とどくとはかぎらないことば
加藤知子毛のものはうんちのにおいみなみ風
夕立の初めの匂い忘れつつ
アイス棒舐めてしゃぶりて優柔不断
夏のはてあと何日自力排泄か
花デイゴ落ちて出会えるひとと落つ
なんでそんなこと言うのと夜の秋立ちぬ
杉山久子草原となりしみづうみ星涼し
黒黴を殺す手立てを検索す
どん亀と呼ばれて昼寝より覚めぬ
坂間恒子夕顔の微熱の闇に水を遣る
自販機の群生船虫の磁力
白木槿古代微笑の交わらず
さるすべり鏡に微熱あるような
仏の間戦ぐ音する青芒
山鳩の鳴けば晩夏のうす濁り
ヨット消えつややかなりし椿山
田中葉月天道虫補陀洛へおすなおすな
青栗のしきりに落つる七七日
端居してアンダルシアの風の中
吸つて吐くただそれだけか月下美人
蟻の列それより先は異界なる