2022年10月7日金曜日

令和四年 夏興帖 第二(池田澄子・加藤知子・杉山久子・坂間恒子・田中葉月)



池田澄子
橡咲いていて茫然と空厚し
伸べし手をウフッとよけたでしょ揚羽
日本は初夏テレビにきらきら焼夷弾
真夜を猛暑のテレビニュースに文句あり
八月十五日テレビを点けっぱなし
夏百夜とどくとはかぎらないことば


加藤知子
毛のものはうんちのにおいみなみ風
夕立の初めの匂い忘れつつ
アイス棒舐めてしゃぶりて優柔不断
夏のはてあと何日自力排泄か
花デイゴ落ちて出会えるひとと落つ
なんでそんなこと言うのと夜の秋立ちぬ


杉山久子
草原となりしみづうみ星涼し
黒黴を殺す手立てを検索す
どん亀と呼ばれて昼寝より覚めぬ


坂間恒子
夕顔の微熱の闇に水を遣る
自販機の群生船虫の磁力
白木槿古代微笑の交わらず
さるすべり鏡に微熱あるような
仏の間戦ぐ音する青芒
山鳩の鳴けば晩夏のうす濁り
ヨット消えつややかなりし椿山


田中葉月
天道虫補陀洛へおすなおすな
青栗のしきりに落つる七七日
端居してアンダルシアの風の中
吸つて吐くただそれだけか月下美人
蟻の列それより先は異界なる