木村オサム口の穴ひとつ目の穴ふたつ冬
雑談の合間の無言日向ぼこ
十二月八日ドラム式洗濯機
外套を着たままスープ啜る音
春近しキリンの舌がちらと見え
【歳旦帖】
中村猛虎(なかむらたけとら)元日の今日も無事目が覚めました
年初めザラメ零れるメロンパン
元日の足の小指をまたぶつけ
あがりから戻る双六離婚して
今日もまた僕を見ている福笑い
浅沼 璞クレーンのゆつくりめぐる初御空
門松の断面そろふ月明り
山姥の図などひろげて屠蘇干して
曾根 毅正月の氷が溶けて耽るなり
野良犬の舌は枯野に染まらない
枝を伐るとき冬空は平らなり
望月士郎一月一日一重まぶたの妻といる
いいかけてそっと平目を裏返す
血の色の実の生っている寒さかな