2021年8月20日金曜日

令和三年 花鳥篇 第八(松下カロ・家登みろく・鷲津誠次)



松下カロ
アドバルーン山椒魚の見し夢は
十薬の葉か人形の心臓か
山椒魚夢より覚めて後ずさり


家登みろく
夫を待つ春の北斗の下に待つ
しあはせの輪郭確かおぼろ月
結末は春風に遣る花占
夫の駆るバイクの音よ麦の秋
五輪来るぬ東京タワーに夏の霧


鷲津誠次
囀りや検針員の忍び足
無人駅に父の下駄の音雨がえる
老施設となりし母校よ花は葉に
洗濯屋の蒸気たわわに夏うぐいす