2026年1月9日金曜日

令和七年 夏興帖 第八/秋興帖 第五(渡邉美保・小林かんな・田中葉月・神谷波・川崎果連・曾根毅)

【夏興帖】

渡邉美保
弟の抽斗に棲む青蜥蜴
うつぼかづらの中の涼しき水溜
青唐辛子焼いてひと日の暮れにけり


小林かんな
日焼して現地の人と同じ卓
蓮の花中古のホンダなお走る
扇風機奥の施術の台も吹く
施術師の話す片言デンファーレ
夜光虫日に日に慣れて車中泊


田中葉月
躓けばやぶ蚊の声もつまづきぬ
孤島といふ波音はるか蟻地獄
それ以上言うとトマトになっちゃうよ
炎昼の何処から来る白き羽根


【秋興帖】

神谷波
名ばかりの立秋箸をあたらしく
いとしげに抱かれて西瓜やつてくる
40℃超のここいら案山子うなだれ
弾丸と見まがふ揚羽金木犀
野分後ピカソ・シャガール・龍三郎
はやばやと雲隠れして今日の月


川崎果連
穴惑リベラルというオルゴール
銃声にあきつのとなめ外れけり
終思ふと兵隊さんのおかげとか
新宿の立ちんぼの父稲を刈る
国民に上級下級秋深し


曾根毅
黒髪の艶やかなりし秋の雲
街路樹の有刺鉄線台風裡
英霊の犇めき合っている稲穂